- 日替わりコラム
Wed
2/15
2023
日本語を書くときの句読点に、多くの方は「、(テン)」と「。(マル)」を使うでしょう。しかし、横書きする場合には「テン」ではなく「,(カンマ)」を使うというルールがあったことをご存知でしょうか。現在も横書きで書かれた教科書の多くは、カンマを使っています。
日本語の左横書きが社会生活に定着したのは戦後です。それまでは、ほとんど縦書きでした。江戸時代に欧文が入ってくるようになり、一部で日本語の左横書きも試されましたが、簡単には広がりませんでした。
戦後、文部省(当時)を中心に、公用文書の作成に左横書きが推奨されるようになります。縦書きではインクが乾くまで手や紙面を汚してしまうおそれがありますが、左横書きにはその心配がありません。書き終えた部分を見ながら書き進めることができるといった利点もありました。
当初は、欧文に倣い、横書きの句読点にはカンマとピリオドを用いることにしていました。しかし、単語と単語の間に空白のある欧文に対し、字間が詰まっている日本語では、小さなピリオドでは埋もれやすいといった理由から、読点はカンマ、句点はマルというルールに変わります。このルールは昭和27年に通知された「公用文作成の要領」に示され、昨年(令和4年)1月にテンとマルを用いることを原則とすると変更されるまでは、政府の公用文における正式な考え方でした。
文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏
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