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2/28
2023
エキノコックス症はエキノコックス属条虫による寄生虫疾患で、人が感染すると重篤な症状になることが知られています。現在でも北海道に多く見られるこの寄生虫は、キタキツネ(終宿主※1 )とエゾヤチネズミ(中間宿主※2 )の間で生活環が成立しています。
通常、エキノコックスはキタキツネの腸管内で成虫まで発育して卵を産みます。キタキツネの糞便とともに排泄された卵は、エゾヤチネズミの口から体内に入り幼虫へと成長し、肝臓内で終宿主であるキタキツネに食べられるのを待ちます。エゾヤチネズミと同じ中間宿主である人間は、キタキツネの糞便に直接触れてはいなくても、土中や水中にあった卵を偶発的に経口摂取してしまうことで感染します。恐ろしいのは発症までの時間が長く、感染がわかるまでに数十年もかかる場合があることです。発見が遅れると、死に至ります。
北海道だけに多く見られたエキノコックスが、近年、愛知県の一部でも散見されるようになりました。その理由は、キタキツネだけではなくイヌも終宿主になるためと考えられています。
予防には、野山に出かけた後はよく手を洗うこと、山菜はよく洗ってから食べること、ノイヌやキツネには触れないこと、キツネは餌付けしないこと、イヌは放し飼いにしないことなどが大切です。
※1 成虫が寄生する動物
※2 幼虫が寄生する動物
イカリ消毒株式会社 取締役・一般財団法人 環境文化創造研究所 評議員谷川力
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