- 日替わりコラム
Wed
3/15
2023
漁業では、狙った魚以外の魚が獲れてしまうことがあります。しかし、量が少ないので持ち帰っても流通しにくく、買い手がつかずに飼料として処分することが多いために海に捨てることがあると聞きます。そんな魚の中に、ノロゲンゲがいます。「ゲンゲ」は下の下という意味で、長らく価値のない下の下の魚として扱われてきました。
生息地は日本海。水深200m前後の深海です。体長20~30cmで背中が薄灰色、腹部が白色の細長い魚で、体全体がゼラチン状の粘液で覆われています。松葉蟹、越前蟹などと呼ばれるズワイガニや白海老の漁で混獲されていましたが、水分が多い身質で、冷たい深海から引き揚げると鮮度落ちが早く、海上で捨てられていました。
しかし、冷蔵設備が進化し、鮮度を保って持ち帰れるようになったことで利用が試みられるようになりました。干物、汁物など、食べてみると意外に美味しいことがわかり、がぜん人気がでました。こうなるともう下の下の魚とは呼べないので、漢字で「野呂幻魚」と書くようになったとのこと。禁漁期である8、9月以外の1年中獲れ、インターネットの通信販売でも購入できるようです。
海にはいまだに利用されていない美味しい魚がいますので、技術で課題を解決し、流通させていきたいものです。
古田優
全部または一部を無断で複写複製することは、著作権法上での例外を除き、禁じられています
- アクセス