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2023

タマバエの大発生で、伊豆諸島のドングリが危ない

 伊豆諸島には、スダジイというブナ科の樹木が豊富にみられます。そのドングリは鳥や昆虫類の食物でもあるため、生態系をつかさどる重要な植物となっています。伊豆諸島の一部の島々では、スダジイのドングリがほとんど形成されず凶作が続いているのですが、最近その原因が解明されました※ 。
 三宅島での調査では、スダジイのほとんどの木で花芽(はなめ)がつく花枝(はなえだ)に虫こぶが形成され、花が咲かない状態でした。その原因は、スダジイタマバエというハエの一種でした。このタマバエは植物体に虫こぶを作り、その中で幼虫が育ちます。幼虫は成熟すると虫こぶから脱出して地中で蛹になり、春に成虫が現れて繁殖します。三宅島でのこのタマバエの数は、2017年にはなんと1580億匹と推定されました。
 虫こぶは伊豆諸島南部に特に多くみられ、ドングリの凶作は2000年くらいから始まりました。このタマバエは九州や西南諸島にも分布しており、DNA解析の結果により西南諸島から伊豆諸島に侵入した可能性が高いようです。西南諸島にはこのタマバエの天敵である寄生蜂がいるのですが、伊豆諸島では記録されていません。伊豆諸島でのタマバエの大発生は、天敵の不在が大きな原因のようです。今後の分布拡大、スダジイの生存とドングリの凶作がもたらす生態系への影響が注目されます。

※ Tokuda M. et al.(2022)Entomol.Sci.,25: e12524.

元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二

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