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Thu

4/27

2023

トタテグモの捕食戦略

 トタテグモは地中に巣穴を掘り、その中で生活します。名前が示すように、巣穴の入り口を糸で作った戸で蓋をして外敵から身を守ります。興味深いのは、餌である昆虫などがやってくるとハッチ状になっている蓋を瞬時に開けて獲物を捕らえ、巣穴に引きずり込んで食べることです。
 トンネル内からは地上の景色は見えないのに、近づいてくる獲物の到来をどのようにして知るのでしょうか。以前の報告から、トタテグモは夜行性であり、獲物の歩く振動が地面を通して伝わり、その振動に反応して蓋を開けて獲物を捕えるのだろうと考えられていました。しかし、それを証明した人はいませんでした。
 最近、この問題に挑戦した研究者が現れました※ 。地面にゴム製のマットを敷いて、振動を伝わりにくくしたときのトタテグモの捕獲成功率を調べたのです。あらかじめ獲物として使ったゴキブリの歩行時の振動がマットを敷くとほとんど下に伝わらないことを確認した後、薄暗い条件でトタテグモがゴキブリを捕獲するかしないかをビデオカメラで撮影して解析しました。すると予想通り、マットを敷かない場合と比べて、捕獲率は大幅に減少したのです。ただ、実際に獲物の振動をプレイバックして、クモがその振動に反応して蓋を開け、捕獲行動を示すかどうかについては今後の研究を待たなければならないようです。

※ Nakamura S. et al.(2022)Invertebrate Biology, https://doi.org/10.1111/ivb.12388

元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二

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