- 日替わりコラム
Thu
5/4
2023
ミツバチは花が咲く餌場をみつけると、巣に戻って仲間にその場所の方向や距離などを知らせます。これを、8の字ダンスで行うことはよく知られています。ミツバチは胃に花蜜を、脚に花粉団子を作って持ち帰りますが、糖は飛ぶための燃料としても重要です。胃の中が空になると、数十分で餓死してしまいますので、花蜜あるいは花粉を採りに行く前にお弁当として蜂蜜を少し胃に詰めていくのです。しかし、必要以上に詰めこむと無駄になります。花蜜を持ち帰るスペースが減るだけではなく、動きが緩慢になれば天敵から襲われやすくなるからです。
巣から餌場までの距離が長いほど、巣内での8の字ダンスの回数が多いことが知られています。最近、その関係に着目して、ミツバチの行動が詳しく調べられました※ 。出発する前に仲間から受け取る蜂蜜の量とダンスの回数との関係を調べたのです。その結果、ダンスの回数が増えるとお弁当の量も増えることが確認されました。また、胃に蓄える量は蜂蜜の濃度によっても変わるのですが、目的地との往復に必要なエネルギーにほぼ匹敵する花蜜の量が持ち出されることが実験によって解明されました。さらに、花蜜採りの経験を積むとあまり迷わなくなるので、お弁当の量が減ることなども明らかとなり、小さなミツバチの行動の進化には驚嘆させられるばかりです。
※ 原野健一(2022)比較生理生化学39:140―149.
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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