- 日替わりコラム
Wed
5/10
2023
海に住むキンチャクガニは、自然界で生き抜くための独特の術を持っています。キンチャクガニは甲羅の幅が2.5cmほどで、薄黄色の肌に黒と朱色の模様が入った歌舞伎役者のような姿をしています。生息地は主にインド洋沿岸ですが、日本では屋久島で見つかっています。
毒性の強いカサネイソギンチャクを岩からはがし、爪先のハサミで盆栽のように剪定してボンボリのように丸く仕立てた後、両手のハサミに挟んで持ち歩いています。そして、魚や蛸などの天敵に襲われたとき、チアリーダーやボクサーのようにボンボリ状のカサネイソギンチャクを振り動かします。もちろん、仕立てられた後もカサネイソギンチャクは生きていますので、魚や蛸がボンボリに触れるとカサネイソギンチャクの触手から発射される小さな毒針が刺さり、撃退することができます。このため、英名では「ボクサークラブ」とも呼ばれています。
このボンボリ、触手が広がった形の良いものほど撃退効果が高く、良い形に仕立てるのには4か月ほどかかります。良いボンボリが完成すると仲間からうらやましがられ、奪い合いになることも。面白いことに、最初は褐色のカサネイソギンチャクが、仕立てられていくにつれ白色に変わっていきます。そして、新しいものと取り替えられて捨てられたカサネイソギンチャクは、また岩に張り付いて元の形に戻るのだそうです。
参考資料:NHK テレビ番組『ダーウィンが来た!』
古田優
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