イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

DAILY COLUMN

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Wed

6/7

2023

紫陽花の色の移ろい

 紫陽花には花の色や形が異なる、とても多くの品種があります。日本から西欧に渡って、西欧人の好みにより改変、選択された品種も日本に戻ってきました。紫陽花の花言葉は少し気難しく、最も好まれている青紫の花でも「辛抱強い愛情」、「冷淡」、「無情」と、まるで相反するようです。これは散ることのない花の色が日時とともに次第に変化し、また、土の酸性度によっても変わるからだろうと思います。梅雨の季節に似合い、それでも爽やかさのある花々です。小庭の紫陽花を見ながら、私が学生の時に書いた古い詩『ブランコ』を思い出しました。
 女の子はあじさいの花でした/ぼくは遊園地を歩いていました/雨がサーッと降ってました/右をふと見たら/濃い紫が上に下にスースーと飛んでいるのです/雨に映えたその紫は/誰もいない遊園地で一人楽しそうでした/近づいてみると/小さな女の子が傘も持たずに/ブランコに乗っているのでした/ぼくは傘をさしかけて 聞きました/「君一人?」「お母さんは?」「友達いないの?」「お家帰った方がいいよ もう夕方 濡れると風邪引くよ」/女の子は何も言いませんでした/ブランコをこぎながら/ただ 微笑んでいるばかりでした/ぼくは来た道に戻りました/心残りに後ろを振り向くと/女の子はもういませんでした/女の子はあじさいの花でした

東京学芸大学 名誉教授・植物と人々の博物館 研究員木俣美樹男

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