- 日替わりコラム
Tue
6/20
2023
アリは、ほかの昆虫や小動物を捕食します。巣内でも、そして外で狩りをするときもさまざまな化学物質を使って仲間と交信します。アリが「道しるべフェロモン」を使って行列を作ることは有名です。
ハダニは植物の汁を吸って生活していますが、巣網を張ってアリなどの天敵から身を守っています。しかし、葉が傷んでくると移動しなければならず、アリに攻撃される危険性が高まります。
そんなハダニが、興味深い方法でアリの攻撃から逃れていることが最近わかりました※ 。
繁殖準備の整った2種類のハダニ成虫を用いてアリが放出するさまざまな化学物質について実験したところ、アリが歩いていない葉には1時間以内に定着したのですが、アリを歩かせた葉にはほとんど留まりませんでした。一方、アリの代わりにアブラムシを歩かせた葉での実験では、ハダニにその葉を避けるような素振りは見られませんでした。これから卵を産んで巣網をつくるハダニにとって、場所選びはとても重要な仕事です。ハダニは、明らかに自分達にとって危険なアリの残した化学物質を認識して、それを避けていたのです。
アリが残した物質がハダニを退ける効果は、3時間もすると消えてしまいます。どんな物質なのか、その正体は解明されていません。
※ Yano, S. et al.(2022)Experimental and Applied Acarology(2022)88:153–163.https://doi.org/10.1007/s10493–022–00752–5
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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