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Wed

6/28

2023

人生永遠のテーマを追った作家 向田邦子(3)名作『あ・うん』の誕生

 向田邦子さんは、脚本から何も感じ取らずにセリフのまま演出するのが嫌いな人です。一つひとつのセリフの間には、汲みつくせない多くの感情があります。演出の深町幸男は「情感の深町」といわれ、そういった演出に長けていました。ドラマ『あ・うん』は、ドラマチックな展開もなくセリフも単調なのですが、深町は奥深い感情表現が出るようにカメラをできるだけ動かさず、じっくりと役者の演技をとらえる手法を採用しました。
 水田仙吉の父・初太郎(志村喬※1 )が、仲の良い仙吉と門倉を指して「神社を守っている狛犬の阿(あ)と吽(うん)だ」というセリフがあります。何気ないそのセリフを見た仙吉役のフランキー堺※2 さんが「『あ・うんの呼吸』。これは仙吉と門倉の親しさを象徴していますね。『あ・うん』という題名はいかがですか」と向田さんと深町に言ってみました。すると向田さんに閃(ひらめ)くところがあったようで、「深町さんこれはいいわね。これでいきましょうよ」と言ったことで決まったのです。脚本を書き始めたときは仮題で「白金三光町」。その後「狛犬」という題名で撮影が進められていました。この『あ・うん』は今それを聞けば、真新しさは感じませんが、発案するまでの過程では、脚本を読み込まなければ出てこない表現です。ものを生み出す知識として学ぶべきところがあります。

※1 日本映画界を代表する俳優。黒澤明監督作品には欠かせない俳優であった。代表作『生きる』、『七人の侍』、『ゴジラ』、『男はつらいよ』
※2 日本の俳優、ジャズドラマー、司会者。代表作は『幕末太陽傳』、『モスラ』、『駅前シリーズ』、『写楽』。テレビでは『あ・うん』が有名

写真技術研究所別所就治

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