- 日替わりコラム
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8/7
2023
昨年、バラエティ番組の「捕れたホタルイカを生のまま味わう」という企画が物議を醸しました。何が問題だったのでしょうか。
ホタルイカの内臓には、旋尾(せんび)線虫類の幼虫(体長5~10mm)が寄生していることがあり、生のホタルイカを内臓ごと食べると、この幼虫がヒトの体内に入り、腸閉塞や皮膚爬行(ひふはこう)症などの症状を起こすことがあるのです。
1980年代半ばからホタルイカが生きたまま遠隔地に運ばれるようになり、各地で前記の症状の発生がみられるようになりました。業者の自主的な冷凍処理により一旦は減少しましたが、再び発生の増加がみられたため、2000年に厚生省(当時)は、生食する場合には冷凍、内臓除去、または加熱処理(ボイル)するよう通達を出しました。しかし、2001~2020年の間に56症例の報告があり、実際には未報告の感染もあると考えられるので、引き続き注意が必要です。
この幼虫の正体は長く不明でしたが、分子生物学的解析により、ツチクジラやアカボウクジラなどのクジラの腎臓に寄生する「クラシカウダ・ギリアキアナ」という数メートルにもなる線虫だとわかりました。ただし、詳しい生活環はまだ明らかではありません。目黒寄生虫館では、この成虫と幼虫の両方を展示しています。
公益財団法人 目黒寄生虫館 研究室長巖城隆
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