- 日替わりコラム
Fri
8/11
2023
日本には約200種のトンボがいることが知られています。成虫の体色は多様で実に美しく、アキアカネのように性成熟するにつれて独特の体色に変化するものや、雌だけに体色の変異がみられるものなどもあります。
ホソミオツネントンボは、秋に羽化すると淡褐色をしています。成虫で越冬しますが、体色に変化はありません。しかし、初夏になると青色に変化します。繁殖期に体色が変化するトンボは珍しくありませんが、このトンボは少し変わっていました。昼間は青色ですが、夕方になると淡褐色となり、翌朝再び青色に変わるのです。実験的に温度を変化させると、低温で淡褐色となり、高温で青色に変わりました。温度に反応して可逆的に体色が変化するという大発見は、今から45年前に茨城県水戸市立国田中学校(当時)の生物研究部によって成し遂げられ、その詳細は日本学生科学賞の応募論文としてまとめられましたが、残念なことに受賞を逃し、その内容は公開されることはありませんでした。最近、この事実を知った青森県在住の奈良岡弘治さんが、彼らの研究結果を紹介するとともに、彼らの結論を支持する独自の観察結果を論文として発表しました※1 。また、淡褐色から青色への変化は迅速ですが、その逆の変化はゆっくりなこともわかってきました※2 。
※1 奈良岡弘治(2016)青森自然誌研究 21:26-30.
※2 Hasebe, Y. et al.(2023)Entomological Science 26, e12537
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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