- 日替わりコラム
Tue
8/29
2023
徘徊は、認知症の中核症状※ の影響で現れる行動・心理症状のひとつです。周りから見ると、意味なく歩き回っているようにしか見えないかもしれませんが、本人なりの明確な理由がある場合が少なくありません。
私の母は80歳代で認知症を発症し、徘徊を繰り返しました。母の行き先は交番が多く、交番から電話がかかってくるたびに私が迎えに行きました。なぜ交番なのでしょう。どこかに行こうと家を出てもすぐに道がわからなくなり、歩く目的が「道を教えてくれる相手を探すこと」に変わってしまうからです。認知症の人は恥ずかしいという気持ちが強く、他人に「自分の家がわからないから教えてくれ」とはなかなか言えません。交番は相手が誰であっても優しく接してくれます。過去のそうした経験から、道に迷ったら、まずは親切に教えてくれる公の場所を探すことを始めると考えられます。もしも自分の親が認知症になって徘徊するようになったら、近所の交番、コンビニ、ガソリンスタンドなどの場所を確認し、電話番号を調べておくことをお勧めします。親が好んで利用していたお店や場所を事前に調べておくのも良いでしょう。事情を説明し、連絡先などを渡しておくのも良いかもしれません。
徘徊は非常に危険を伴い、歩行中に転倒したり事故にあったりする可能性もあります。できるだけ早く探し出すことが重要です。
※ 認知症の本質的な症状である抽象思考の障害、判断の障害、失行、失認、失語、実行機能障害など
介護福祉士中村和彦
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