味の素が中期経営計画を止めた理由

　雑誌『オルタナ』の73号では、味の素執行役常務の森島千佳氏に取材しました。その中で常務は、同社が今年2月に「中期経営計画」を止めた理由を以下のように説明しました。「細かい部分まで現実的な数値目標を設定していましたが、計画策定にエネルギーを掛け過ぎて、長期視点を失ってしまうことを問題視していたのです」。
　背景には、目先の数字の達成に追われて長期視点を欠く「中計病」があり、単年度視点の予想を3年分集計して、中計を策定していました。目標の定め方も、現状をベースにした「積み上げ式」でした。
　そこで、目先の数字に追われることなく、野心的な長期目標に挑みやすい社風づくりに取り組み始めました。そのための指標として、社会価値と経済価値を統合したASV※ 指標を掲げました。具体的には、2030年までに、ROIC(投下資本利益率)は約17％(直近の実績は9.9％)を掲げました。成長率の目安は年5％です。つまり、売上高の目標を掲げるのではなく、利益率を高めたい、毎年5％程度成長すれば良いと宣言したのです。
　ただし、目標を緩くしたわけではありません。これまで営業成績は四半期ごとに振り返っていましたが、今後は「毎月」振り返ります。これはこれで厳しい管理ともいえます。

※ 「Ajinomoto Group Creating Shared Value」の略で、事業を通じて社会価値および経済価値を共創する取組み

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