- 日替わりコラム
Thu
10/26
2023
ドラマ『あ・うん』は、日本が長く続けていた15年戦争※ の真っただ中、昭和10年の東京が舞台になっています。主役の永田仙吉は製薬会社に勤めるサラリーマンで、親友の門倉修造は実業家として活躍していました。2人は戦前の徴兵制度により2年間徴兵され、営内居住の際に、寝る場所が隣り合わせであったことが縁で親友になったのです。古い言い方をすれば「寝台戦友」です。
『あ・うん』の中に、「父の趣味は威張ることです。威張っているくせに、月給袋や賞与の袋は自分では切りません。母に切らせます」というセリフがあります。当時の給料は手渡しです。振込みではありません。経営者である修造の羽振りの良さは家族にも見られていますので、仙吉は修造に対し、親友でありながら非常に引け目を感じていました。でも「俺は俺なりに頑張って、家族を養うために稼いでいるのだぞ」ということを示したいのですが、仙吉は恥ずかしくて言えません。だから「せめてもの威厳」としてそのまま給与袋を渡すのです。
仙吉は本来、頑固者で駆け引きが苦手です。修造のように女遊びができる甲斐性もない。なんでもできる修造が羨ましい反面、疎ましいとも思う。この二面性が、仙吉が家庭で頑固な振る舞いをする原因でした。父であるということは時には苦労しますね。
※ 1931(昭和6)年の満州事変から日中戦争・太平洋戦争を含め、1945(昭和20)年8月の終戦までの15年間にわたる日本の対外戦争の総称
写真技術研究所別所就治
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