- 日替わりコラム
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10/27
2023
ハダニは植物の葉上で、その汁を吸いながら生活しています。ハダニは、0.5mmにも満たないほど小さく、葉を暴食するチョウやガの幼虫であるイモムシに食べられてしまう危険があります。イモムシたちはベジタリアンですから、好んでハダニを食べるわけではありませんが、ハダニにとっては生死にかかわる一大事です。その理不尽な状況に、ハダニがどのように対処しているのかを調べた研究者らがいます。その結果、ハダニたちも黙って食べられてはいないことがわかってきました。
アゲハチョウ、スズメガ、カイコガ、ハスモンヨトウなどのイモムシとハダニの行動を観察したところ、ハダニは、それらのイモムシが歩いた葉を避けることが発見されました※ 。カイコガの幼虫が歩いた場所をハダニは2日間避け続け、また幼虫の体表をアセトンで抽出したものを濾紙に塗ると、ハダニたちはそれを避けて立ち去ることが実験的に証明されました。
農業の現場では、ハダニは害虫として殺虫剤によってしばしば駆除されますが、殺虫剤は人体への影響が心配されるばかりでなく、ハダニに抵抗性が生じて効かなくなるという深刻な問題があります。著者らは、ハダニの駆除の手段として、イモムシの体表物質を利用することで、そのような問題を解決できるのではないかと考えています。
※ Kinto S.et al.(2023) Scientific Reports 13:1841.doi.org/10.1038/s41598—023—28861—0
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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