- 日替わりコラム
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11/13
2023
淡水性の2枚貝には、成長過程の一時期のみ魚に寄生するものが知られています。イシガイ科やカワシンジュガイ科(どちらもイシガイ目)の2枚貝は、浮遊性のグロキディウム幼生として卵から孵化します。グロキディウム幼生は小さな2枚貝の形をしており、同じ環境に棲(す)む魚類の鰓(えら)や鰭(ひれ)に寄生します。一定期間が過ぎると離脱し、普通の2枚貝のように底生生活となりますが、幼生期に魚類に寄生することが、その後の成長に必須となります。つまり、これらの2枚貝は、宿主となる魚類なしには子孫を残せないのです。
環境の悪化・乱獲による個体数の減少や、移動能力の低さから、現在イシガイ目の2枚貝は国内各所で保全の対象になっています。生態学的な研究により、2枚貝の種によって宿主となる魚類に選好性があることがわかってきました。ブルーギルやブラックバスなどの外来魚種が増加し、貝の生息に悪影響を及ぼしている可能性も報告されています。健全な個体群を維持していくためには、貝そのものだけでなく、元来の魚類相とセットで守っていく必要があるのです。
寄生性の動物が保全の対象となるのは珍しい事例です。イシガイ目2枚貝の場合、保全対象種と宿主の両方の生息環境を考慮しなければならない分、検討すべき点が多いでしょう。
公益財団法人 目黒寄生虫館 研究員髙野剛史
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