- 日替わりコラム
Thu
12/7
2023
人権への配慮や男女平等の意識が重んじられるようになり、以前は気づかなかったことが気になる場合があります。そのひとつは、配偶者の呼び方です。自分の配偶者について語るときには「妻」、「夫」でよいとしても、ほかの人の配偶者をどう呼ぶか迷うことはありませんか。
たとえば、誰かの妻に当たる人を話題にするときには、「奥様」や「奥さん」という言い方が広く使われてきました。今でもそのままでまったく気にならないという方も多いでしょう。この「奥」というのは、もともとは身分の高い人の妻が屋敷の奥のほうにいたことから生じた表現であるといわれ、敬意を表すものであったとも考えられます。
しかし、「家の奥に押し込められているようでいやだ」という声もあります。そもそも男性を中心とした封建社会の名残としての言葉であり、受け入れがたいという人もいるでしょう。同様に、夫に当たる人を「御主人」、「旦那さん」などと呼ぶことに抵抗を感じる人もいます。
現在のところ決定的な正解はなさそうですが、たとえば相手の配偶者を「おつれあい」、「パートナー」などと言う方法があります。また、SNSなどで最近広がりつつあるものに「妻さん」、「夫さん」という言い方もあるようです。いずれにしても、人によって受け止め方に差がある問題ですから、相手の気持ちを酌む努力が求められそうです。
文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏
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