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2024
使用者は労働基準法の趣旨に鑑み、労働者の労働時間を適切に管理するという責務を負っています。しかしながら、労働時間の把握にあたり自己申告制を採用、その不適正な運用により労働基準法に違反する過重な長時間労働や割増賃金の未払いなどの問題が生じることがありました。
そこで2017年1月、厚生労働省により「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定されましたが、遵守しなくても法律違反とはならず、実効性を欠く状況にありました。
2019年の労働安全衛生法改正により、客観的な記録による労働時間の把握が法的義務とされました。具体的には、労働時間の把握は、原則として、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータなどの電子計算機の使用時間の記録などの客観的な方法によらなければならないとされ(労働安全衛生規則第52条の7の3第1項)、自己申告によることができるのは、例外的な場合に限られることとなりました。また、使用者は、把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならないとされました(同第2項)。
労働時間の把握義務違反について、直接の罰則規定はないものの、労働時間の上限規制に違反する場合には刑事罰が科され、労働基準監督署による法令違反の是正勧告の対象となります。
アジアンタム法律事務所 弁護士高橋辰三
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