若き開発者への手紙(38)論語と商品開発

　日本人メジャーリーガー大谷翔平選手は、高校時代に作成した目標達成シートに、運をつかむための8つの行動目標として「本を読む」、「ゴミ拾い」、「あいさつ」、「審判さんへの態度」、「部屋そうじ」、「道具を大切に使う」、「プラス思考」、「応援される人間になる」と書いています。そして今、彼の愛読書は渋沢栄一の『論語と算盤※ 』なのだそうです。彼にこの本を読むことを勧めたのは日本ハムファイターズ元監督の栗山英樹氏だそうですが、彼がそれ以前から、道徳観をしっかり持っている選手だったことは明らかです。グラウンドに落ちているゴミをさりげなく拾う彼の姿が、全米でマスコミ報道されたことは有名です。
　渋沢栄一は士農工商の時代に「国の永続的な富をなす根源は、社会の基本的な道徳を基盤とした正しい素性の富である」とし、商道徳を基盤とした商業(金儲け)は社会を支える大切なものであり、けっして卑しい職業ではないことを示しました。また、大谷選手はアスリートとして論語を学び、そこからスポーツマンシップ以上の人間力とでもいうようなものを身に付けているのではないかと思います。
　道徳という言葉を耳にする機会が減った今日、私たちも原点に立ち返り、論語からの学びを商品設計に反映させることで、もっと理想的な商品を生み出せるのではないでしょうか。

※　日本の近代資本主義の父、渋沢栄一の講演録。大正5(1916)年刊行

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