- 日替わりコラム
Thu
3/21
2024
契約が締結されるまで各当事者は原則として契約をやめることができます。これを契約自由の原則といい、契約締結前には契約上の債務はないので債務不履行もあり得ないということから導かれます。しかし、契約交渉過程において、当事者間には一定の社会的接触関係が発生しているため、相手側から契約成立の主張や、契約が成立していないとしても不当破棄により被った損害の賠償を請求されることがあります。判例でも、建築中のマンション販売業者が購入を検討していたクリニックの問い合わせを受けて設計変更をしたのに、結局当該不動産が購入されなかったケースにおいて、契約の成立は認められないが、契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由として購入検討者に損害賠償責任を認めています。
契約交渉の不当破棄と類似のものとして、婚約の破棄を理由とした損害賠償を認める裁判例があります。この場合は、指輪の購入や親への挨拶など、将来、婚姻をすることについて当事者間の約束(婚約)があることが認められ、当該婚約関係の一方的な取消しが正当な理由をもたないものである場合には、破棄した者に不法行為責任が認められます。婚約破棄の正当な理由とは、たとえば、相手の不貞行為、DV、重大な事実の発覚(実は子どもがいる、重大な前科)などが挙げられます。
アジアンタム法律事務所 弁護士高橋辰三
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