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4/9
2024
日本では乳幼児期の定期予防接種が普及しており、ジフテリアトキソイドを含む4種混合ワクチン(ジフテリア/破傷風/百日咳/ポリオ)の効果により、1999年以降、ジフテリア患者の発生は報告されていません。しかし、ワクチン接種が徹底されていないアフリカ、東南アジアではジフテリアが散発的に発生しており、医療現場における予防・治療・診断の充実は公衆衛生上の課題です。
ジフテリア菌(コリネバクテリウム・ジフテリア)と同属のウルセランス菌(コリネバクテリウム・ウルセランス)は、ジフテリア毒素と同様の毒素を産生し、感染した場合はジフテリアと同じ症状(呼吸困難や麻痺、皮膚潰瘍)が見られます。ここ数年、国内でも治療を必要とする患者が発生、重篤な場合は死亡例も報告されています。患者の生活環境を調査した結果、飼っている犬や猫が同じ菌に感染しており、人と同様に鼻水、咳、皮膚潰瘍などの症状が確認されました。コリネバクテリウム・ウルセランス感染症は、ウルセランス菌が犬猫に感染したのちに人へ感染する人獣共通感染症で、飼い犬・飼い猫の健康管理に注意すれば感染を避けられる病気です。免疫力が落ちている高齢者や関節炎などの治療で免疫抑制剤を投与している方は、感染リスクが高い傾向にありますので特に注意が必要です。
熊本保健科学大学 生物毒素・抗毒素共同研究講座 特命教授髙橋元秀
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