- 日替わりコラム
Wed
5/22
2024
靴の踵(かかと)が邪魔で、脱いだり履いたりがスムーズにできない。日常のささいなことですが、ここに不満を感じる人は多いものです。
日用品メーカー、株式会社アイキの社長である小林功さんが開発した「手楽靴」は、踵を後ろに少し引くと踵が後方へ倒れ、そのまま脱ぐことができます。履くときは、足先を靴に差し込み踏み込むと踵が閉じ、靴ベラや指を使う必要がありません。サンダルのような感覚で靴を脱いだり履いたりができるのです。
小林さんは、趣味の寺院巡りで京都へ行ったときにこのアイデアを思い付きました。1日に10か所以上のお寺で、拝観のつど靴を脱いだり履いたり。その不便から、靴の踵に扉のヒンジ機構を取り入れ、足を出し入れさせるだけで開閉するように考えたわけです。「おそらく100回ではきかないほど試作をしました」と、発案から完成までが困難でした。特に靴に足を踏み込んだときの踏力は、体重の10倍、約500kgかかります。ちょっとやそっとでは壊れない仕組みにすることに苦労したそうです。また足首の太さや形、甲の高さなどは人によって異なります。微妙な違いに適合させるため、踵に柔らかい純アルミの板を入れて指力で成形できるようにし、足の甲はベルトで高さを調整可能にするなど、目に見えない工夫を重ねて完成させました。
一般社団法人 発明学会 顧問平井工
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