- 日替わりコラム
Thu
5/23
2024
最近、経営者の中で「パーパスマネジメント」という言葉がよく使われるようになりました。この言葉は、もともとはアメリカの経済団体が2019年に表明した指針で、企業のパーパス(目的)を、それまでの株主の利益第一主義から、人や社会に貢献する存在であるという考え方にシフトするべき、というものでした。
これらの考え方は、CSR(企業の社会的責任)として日本でもすでに1970年代から存在していましたが、企業の利益との主従関係でいえば、CSRは下位に見なされていました。
他方で、2009年には国際労働機関の総会で「ディーセント・ワーク」という提言がなされ、それは「働きがいのある人間らしい仕事」の実現を目指すものでした。また、ある哲学者は、「倫理資本主義」といった世界感を論じています。つまり企業の生産性は貨幣ではなく倫理、すなわち幸福度であるというものです。
社会の幸福や、ワーカーの幸福度を高めるパーパスを実現するための企業経営方針がパーパスマネジメントであり、現在多くの企業がその重要性を認めています。しかしながら1970年代のように、認めつつも自社の利益を上位概念としては本末転倒です。健全なパーパスマネジメントが求められています。
東京造形大学 造形学部デザイン学科 教授地主廣明
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