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7/30

2024

人生永遠のテーマを追った作家 向田邦子(12)「言ったら、負け」

 向田邦子さんは、女性の心情を冷酷なほど的確に表現する場合があります。それは代表作『阿修羅のごとく※ 』にハッキリ見ることができます。四姉妹の母親・ふじ(大路三千緒)は夫・恒太郎(佐分利信)の浮気を知っているのか、ストーリーがある程度進むまでわからないのですが、あるワンシーンによって知っていることがわかります。
 帰宅した恒太郎のコートにブラシをかけている時、「〽でんでんむしむし、カタツムリ……」ポケットの中からミニカーがころりと出てきます。ふじは黙って手のひらに載せて見ていると思ったら、畳の上で走らせたりする。「〽お前の頭はどこにある」。そしていきなり襖の中央に向かって食い込み突き抜けるようにミニカーを投げる。その時、ふじの顔は阿修羅に変わっている。そう、ミニカーは愛人の子どもの玩具だったのでしょう。確証ではないが察するに十分です。実はドラマ全体を見ると、ふじが夫の浮気についてハッキリ言ったシーンはありません。でも一発で伝わります。これが向田邦子さんの凄さかもしれません。
 四姉妹とふじのやり取りの中で、次女(八千草薫)の夫の浮気について、ふじは次女にこう言います。「女はね、言ったら、負け」。言ったらすべてが破滅する。浮気相手の思うがまま、絶対にそうはさせない。これは娘にとどまらず、自身に対しても言い聞かせているのです。

※ 1979年と1980年に土曜ドラマ(NHK)で放送されたドラマ(全2部・計7話)。
  演出は和田勉。主演は八千草薫、佐分利信、いしだあゆみ。後に映画と舞台にもなる

写真技術研究所別所就治

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