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2024

身近な生物毒素(4)ヤマカガシ

 ヤマカガシ(学名: Rhabdophis tigrinus)は、山地や水辺に分布し、主にカエルを食べる毒ヘビです。毒ヘビは上あごの奥歯に通常2本の毒牙を持っており、ハブやマムシは咬傷時に牙の中央部(管牙(かんが))から皮下組織内に毒液を注入しますが、ヤマカガシは牙の溝(溝牙(こうが))を通じて流れ出た毒液が皮膚表面から吸収されます。また、ハブやマムシは咬傷直後から疼痛や出血などの症状が認められますが、ヤマカガシは咬傷直後に痛みや出血を観察することは少ないようです。ヤマカガシの奥歯が皮膚に引っかかってぶら下がる事例や、咬まれた皮膚表面にひっかき傷様の軽い傷が残った事例もあります。さらに、ヤマカガシは毒牙につながる毒腺とは別に頸部の毒腺を持っています。野外で犬や人がヤマカガシの頭部を足や棒などで叩いたときに、頸部の毒腺から毒液を拡散し、この毒液が目に入ると結膜などの充血、痛みを引き起こします。
 しかし重要なことは、咬まれたときであり、毒素の影響で血液が固まらなくなり、全身で出血が起こり、重症の場合は死亡する事例も起きています。このような患者を救うために、国は緊急用の抗毒素を研究班で作製して、救命用の医薬品として利用できるようにしています。残念ながら国が製造販売を認めた医薬品ではありませんが、緊急時には最寄りの保健所を経由して利用する仕組みが作られています。

熊本保健科学大学 生物毒素・抗毒素共同研究講座 特命教授髙橋元秀

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