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2024

人生永遠のテーマを追った作家 向田邦子(13)心情の表し方

 土曜ドラマ『阿修羅のごとく※ 』の冒頭にこんなシーンがあります。四姉妹の三女の滝子(いしだあゆみ)が重々しい雰囲気で次女の巻子(八千草薫)に公衆電話から電話をかけている。滝子が「ちょっとね、ハナシがあるのよ」と言いながら、曇り窓に指先で「父」という言葉を"なぞる"。滝子は「そんな呑気な話じゃないわよ」と言いながら、繰り返し"なぞる"ので「父」という文字はどんどん太くなっていく。そして、滝子は四姉妹を次女の家に集めて話したいことがあるという。滝子は四姉妹の中では、生真面目でお堅くもっとも貞操観念が高く、曲がったことが大嫌いです。このシーンから、問題は父親にあることがわかります。
 順次ドラマを観ていくとわかりますが、父・恒太郎(佐分利信)には浮気相手がいて、その相手との間に子どもがいることを伝えるために集合をかけたのです。怒りは「父」となぞった文字の太さに現れています。向田邦子さんの表現は繊細かつ大胆。そして市井の生活を軸にして、巧みな映像表現を演出家に求めています。
 メロドラマというのは、完成された豊かなムードが徐々に壊れていく瞬間から始まります。この作品では四姉妹を軸にして、それぞれが巧みに隠していた事実が徐々に露呈します。その姿を強烈に描いた作品として『阿修羅のごとく』は名作といえるでしょう。

※ 1979年と1980年に土曜ドラマ(NHK)で放送されたドラマ(全2部・計7話)。
  演出は和田勉。主演は八千草薫、佐分利信、いしだあゆみ。後に映画と舞台にもなる

写真技術研究所別所就治

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