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10/16

2024

ニクバエの大きな孵化幼虫のメリットは何か?

 卵胎生のニクバエは動物の死骸に幼虫を産みます。幼虫はその死肉を食べて、4~5日で死骸から離れ、地面に潜って蛹になります。
 ニクバエの孵化幼虫の体重には大きな変異がみられます。実験室で十分な餌(レバー)を与えた場合、孵化時の体重とその後の発育のスピードとの間にはなんら関係性はみられませんでした。次に、餌量を変えて幼虫を飼育すると、小さなレバーの肉片では小さな成虫しか育ちませんでしたが、孵化時の体重との関連はみられませんでした。そこで、はじめは十分な餌を与え、孵化後36時間あるいは48時間で餌場から離し、おが屑に移しました。幼虫はおが屑に潜って蛹になりました。予想通り、早期に餌場から離された幼虫は小さな蛹になりました。この場合、孵化時の体が大きいほど大きな蛹となり、大きな孵化幼虫のメリットがみつかりました。興味深いことに、そのメリットは早期に餌から離された場合に、特に顕著でした。
 ニクバエの幼虫の餌場である動物の死骸には、そのにおいを嗅ぎつけ、しばしば大型哺乳動物がやってきます。すると、ニクバエは突然食物を奪われてしまいます。孵化幼虫が大きいということは、限られた摂食時間でもより大きな蛹、つまりより多くの卵を生産できる成虫になれるという選択的メリットがあるのかもしれません。

参考文献:Tanaka, S. et al. Researches on Population Ecology(1990)32: 303―317.

元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長 田中誠二

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