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2024

目黒寄生虫館に展示されている寄生虫(21)ヒトジラミ

 シラミ類は世界に約500種がいて、哺乳類に寄生し吸血します。宿主特異性が高く、人のシラミ類は人だけに寄生するヒトジラミとケジラミです。ヒトジラミには、頭髪にすむアタマジラミと、衣類にすむコロモジラミがいます。これらは形態では区別が困難で、遺伝子レベルでもほぼ同じなので、同胞種(形態で識別できないが生態などの違いで交雑しない種)とされています。一方、前二者とは属が異なるケジラミは陰毛に寄生し、形態で明らかに区別できます。最近、駆除薬への耐性が問題になっているトコジラミ(ナンキンムシ)はカメムシの仲間で、シラミとは別の昆虫です。
 コロモジラミは衣類にすむので、人類が衣類を着始めた後に、人の頭髪に寄生していたアタマジラミの祖先からコロモジラミが分岐したと考えられています。2003年にドイツの研究者が遺伝子解析によって、この分岐時期を今から約7万年前と推定しました(後に約11万年前と訂正)。さらにアメリカの研究者は2011年に、分岐を少なくとも8万3000年前、早ければ17万年前と推定しています。人類の衣類の使用はこの時期からと示唆され、18万年前に始まった氷期により気候が寒冷化したこととも一致します。このように寄生虫の進化の研究から、人類の歴史が解明されるのも面白いと思いませんか。

公益財団法人 目黒寄生虫館 研究員巖城隆

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