- 日替わりコラム
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2025
オフィス環境と生産性の関係に関する研究は20世紀初頭から論じられており、「オフィス環境をいくら整備しても必ずしも生産性に寄与しない」という結果が出されています。有名な1920年代の実験でも、生産性は環境(照度、空気、温度)よりチームの人間関係に支配されると結論付けられています。しかしながら、当時の生産性は書類作成のミス率に代表される「量的な生産性」でした。対して現在では、ナレッジワークに代表される「質的な生産性」です。では、あらためて、オフィス環境はナレッジワークに寄与するのか、というとなかなか結論は出ていません。
環境工学的にも美的にも優れたオフィス環境で働くワーカーの知的生産性は向上するのか。この問いに対して、最近興味深い研究がなされています。そこでは、ワーク・エンゲイジメント(仕事に対してポジティブで充実した心理状態)が高いワーカーほどグッドオフィスを求め、それが低いワーカーは求めない傾向があるというのです。このことは、環境と人間(ワーカー)が密接な関係性を持っていて、単に環境を良くしても、単にワーク・エンゲイジメントを高めても知的生産には寄与しないことを意味しています。単に物理的に美しいオフィスを作るだけではなく、同時にそこで働く人への投資が求められているのです。
日本オフィス学会 副会長地主廣明
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