- 日替わりコラム
Wed
1/15
2025
ふだん私たちが目にする、寄生性ではない、すなわち自由生活を送る動物には、おおむね1種類以上の寄生虫がいると考えられています。これを根拠に、地球上の動物種の約4割、あるいは半分以上が寄生虫であるという推定がなされています。突拍子もない話と思われるかもしれませんが、寄生虫はそれほどに多様で、身近な存在なのです。
ところで、寄生虫も動物です。では、寄生虫に寄生する動物もいるのでしょうか。正解は「はい」です。寄生虫に寄生する現象を「超寄生」と呼び、昆虫類では盛んに研究が行われています。寄生蜂に寄生する寄生蜂が代表例です。昆虫以外では、二枚貝に寄生するカクレガニ(ピンノ)に寄生するエビヤドリムシやフクロムシ(いずれも甲殻類)、魚に寄生するウオノエ(甲殻類)に寄生する単生虫(扁形動物の仲間)などが知られています。カクレガニは食材として馴染みのあるアサリやハマグリにも寄生しているので、丹念に観察していれば超寄生を目撃する機会があるかもしれません。
カキに寄生するカクレガニの研究では、超寄生者の存在により短期的にはカキへの負の影響が強くなる可能性が指摘されています。このような三つ巴の利害関係は、これまであまり調べられていません。生態系の中での生物同士の関係は、私たちの想像よりずっと複雑なのでしょう。
公益財団法人 目黒寄生虫館 研究員髙野剛史
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