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2/11
2025
疾病負荷(disease burden)とは、特定の疾病、障害、危険因子がある集団の生存年数や健康状態、生活の質、経済的コストなどにどの程度の影響を及ぼすかを示す指標です。疾病負荷を定量的に測る指標の1つにDALYs(障害調整生存年)があり、食品安全施策の優先順位決定などに利用されています。DALYsは、ある集団の健康影響を総合的に定量化するための指標で、YLLs※1 とYLDs※2 を加算することにより得られます。
食品安全委員会が作成した2018年5月の食品健康評価のためのリスクプロファイルで、カンピロバクターのDALYsは6064、ノロウイルスのDALYsは515と試算されています。カンピロバクターは少人数で発生するのに対し、ノロウイルスは大規模発生が多く患者数も圧倒的に多いのでDALYsも高いのかというと逆で、DALYsは10分の1以下と試算されています。これはノロウイルス食中毒が一過性の下痢・嘔吐などで済むのに対し、カンピロバクター食中毒は神経麻痺を伴うギラン・バレー症候群の発症にもつながることによるものと考えられます。カンピロバクターはノロウイルスより10倍以上DALYsが高いので、鶏肉は十分に加熱調理してカンピロバクター食中毒を防ぐことで、社会の疾病負荷の低減につながることを意識したいですね。
※1 損失生存年数、死亡が早まることで失われた年数を合計したもの
※2 障害生存年数、障害を抱えて生きる年数を合計したもの
元保健所食品衛生監視員小暮実
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