- 日替わりコラム
Wed
2/12
2025
10年ほど前からでしょうか、勤務先でもらうメールの中に「すいません」という書き方を目にすることがあり、気になっています。
ドラマなどで「すまない」、「すまなかった」と謝る場面を見ることがあります。この「すまない」の丁寧語が「すみません」で、日常よく使われます。その変化した形である「すいません」は、話し言葉として用いるものの、書き言葉では、「すみません」と書くのが一般的でした。それで、メールの「すいません」が気になるのです。
では、話し言葉でこうした変化が起こるのはなぜでしょうか。「すみません」をそのまま口に出して読んでみてください。「み」と「ま」の音は唇を2回連続で閉じないと発音できません。次に「すいません」と口にしてみましょう。唇を閉じるのが1回で済むので、ちょっと楽に感じませんか。発音しやすく変化した形が「すいません」なのです。こういった語形の変化を「音便(おんびん)」といいます。
たとえば「書く」という動詞。書かない、書きます、書く…とカキクケコに活用しますが、「書いて」という形があります。もともとの「書きて」が音便化して定着したもので、現代語では、書き言葉でも「書いて」を使います。「すいません」もいずれ当たり前になり、書き言葉でも抵抗なく使われるようになるのかもしれません。
文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏
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