- 日替わりコラム
Mon
3/3
2025
川端康成(かわばたやすなり)先生の著作に『美しい日本の私』という一冊の本があります。
冒頭に紹介されております、道元禅師(どうげんぜんじ)の『本来(ほんらい)の面目(めんもく)』と題される
「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 冷(すず)しかりけり」という歌と、「桜の詩人」と称される西行法師(さいぎょうほうし)に対し、「月の歌人」と謳(うた)われる明恵上人(みょうえしょうにん)の
「あかあかや あかあかあかや あかあかや あかあかあかや あかあかや月」という歌は、「日本の美しい四季折々の景色」や、その風景の中にこそ宿る「美しい日本の心」にふれることのできる名歌として、当時、青年でありました私の心に広く響き、深く刻まれました。
また、日本美術の特質の一つとして、「雪月花の時、最も友を思ふ」という詩語に、その心が集約されるということが記されています。
「心」とは「命の源泉」であり、「美」とは「命の源流」であります。「美」を発露するも感受するも、その根源は「心」にあり、「心」より生じ、「命」へと帰するものが、「美」の本性というものなのでしょう。
「美しい心」とは、私たちの「いのちの故郷」なのかも知れません。
「心穏やかに生きる」ことや、「日々を幸せに生きる」ということは、「美しい心」を見つめるということなのだと思います。
合掌
下野薬師寺別院 舎那殿壇 龍興寺 副住職阿波建多
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